先に言っておく。私はプリキュアが好きだ。
作品は初代から現行まで全て見てきたし、リアルタイムで見ている作品では2周した作品も多い。
感想ツイートを見てもらえれば分かるがプリキュアに関しては基本肯定的に褒めている。
この20周年のために全作見返した。それくらい好きなのだ。
それを踏まえた上で今回の記事を見てほしい。
結論から言おう。ひろプリは駄作であるとしか言えない。正確には駄作と呼ばれる作品に該当する要素が多く存在するというべきだ。
その要素は大きく分けて5つある。
①伏線のない唐突な展開の連続
②それまで積み重ねた尺の放棄
③積み重ねのないインスタントすぎる「エモいに似た何か」の連続
④キャラクターの掘り下げ不足
⑤男プリキュアがノイズである
まず①から見ていこう。
①伏線のない唐突な展開の連続
鷲尾P、シリーズディレクターも務める小川監督、シリーズ構成の金月龍之介。誰の手癖か断定は難しいが設定の開示もされない唐突な展開が数多く見られた。
カイゼリンがヒーローだからという理由で入れ物認定、変身しすぎて変身解除、スキアヘッドのいきなりのラスボス化、いきなり現れて説明のないダイジャーグ。終盤だけでこれだけある。
新しい設定が加わるのは作品ではよくあること。しかしいきなり出すなら設定を説明するなり伏線なり布石なりを作る時間はいくらでもあったはずだ。
なのにこの座組は一切しなかった。
急に生やした設定で急に生やした設定を紡ぐ。まともに見ていれば理解不能の展開の連続。
稚拙すぎだ。
②それまで積み重ねた尺の放棄
主にスキアヘッドに費やした尺のことだ。
カイゼリンへの愛で戦っているとスカイに言っていたにも関わらず(身を挺して庇う、一度犬死にしてまで代わりに戦い続けた描写を入れて)それが全部嘘だったと。
ここまで費やしてきた時間は何だったのか。
愛のために生きていた(と思われた)スキアヘッドのキャラが全て否定され、スキアヘッドに残された設定は何も残っていなかった。
正体であるダークヘッドも「アンダーグエナジーの化身、自身の入れ物を探している」しか設定がない。
3クール目からは出てきていたので、ポッと出のラスボスでもないのに設定が何もないという虚無なキャラ。
嘘で設定をひっくり返すならそれ相応のキャラと設定を用意しておけよと言いたくなる酷さだった。
他にもある。
それまで父親を討たれた憎しみでエルレイン憎し、スカイランド憎しで動いていたカイゼリンが父親の仇であるスキアヘッドに対して何の憎しみも抱いてないのは無理があるだろ。
目の前に父親の仇がいるんだぞ。
「可哀想な被害者」にさせたいがために、それまでの設定を忘れさせるのでカイゼリンに使った時間は一体何だったのか。
③積み重ねのないインスタントすぎる「エモいに似た何か」の連続
主にカップリングとして(といってとほとんど虚無だが)ツバあげ、ツバエルが該当する。
前者はメイン回が3話ほどしか描写がないにも関わらず、ほぼ言ってない「最強のコンビ」発言やカップリング扱い。
そもそもカップリング扱いするほど絡みもない。
一年通してコンビ組んで戦っていた訳でもない。
カップリングっぽい雰囲気だけで一年やり通しただけである。
一応2人の合体技である『プリキュア・タイタニック・レインボー』もミックスパレットの箱絵と説明書を見てもらえれば分かるが、バタフライは描かれてもウイングは描いてない。
玩具時点ではバタフライの単独技としか描かれてないのである。
ウイングがいなくても成り立つという証明になるのではないか。
ツバあげ言ってる人はどの辺がカップリングなのか教えてほしいものだ。
後者はカップリング扱いするにはあまりにも設定に無理があるし、それを損なう劇中の失言も多い。
そもそもエルちゃんはまだ赤ちゃんである。
回想の描写から年齢にして一歳か二歳程度。1話ではほとんど喋れなかったくらいには幼い。
ソラ達のことも友情、恋愛感情、家族愛の区別がついてないくらいには認識がハッキリしていない。
マジェスティ覚醒後は身体は成長したが内面に関しては何の説明もない。劇中でもただ赤ちゃんの身体が大きくなったとしか扱われてない。
カップリングっぽいことを喋らせるにも、特定の異性に対して恋愛感情を抱くには物事の区別が出来ない赤ちゃんという設定がノイズすぎるし、精神的に成長しているというには自分は赤ちゃんである自覚もあるのでそれも矛盾する。
40話の結婚回もあげはがちゃんと結婚について教えなかったせいで複雑になっているが、結論としてエルちゃんの考えは友情と家族愛の混合に近い。
結婚回で結婚したと思っていること自体認識を間違えている。
もう一つはツバサの失言の数々。
9話でエルちゃんのナイトと自称しているが自称しているだけである。
13話で用事のあるソラとましろに代わってエルちゃんの育児をすることになった際に「なんでこんな貧乏くじを」と言っている。
エルちゃんの育児をする気なんてツバサには最初から無いのだ。
他にも33話でエルちゃんをプリキュアとして戦わせるかどうかという話をしている時にも戦闘中という事情抜きにしても「そんなこと言ってる場合ですか!」と切り捨てる有様。
お前が1番それ言っちゃいけないだろと言いたくなる。
仮にもナイトなら戦闘前に「プリンセスの分まで僕が戦います!」くらい言ったらどうだ。
まだあるぞ。47話で成長したエルちゃんを見て「プリンセスはどこですか?」と慌てふためく始末。
『映画プリキュア5』の夢原のぞみのように偽物のココを見破るくらいのことをしないのは、その程度の関係でしかなかったんだなとしか言えない。
外見でしかエルちゃんのことを見てなかった証拠だ。
ギャグシーンとして演出したかったのだろうが、終盤になって仮にもカップリング相手の内面も見れない奴としか見れない。
夕凪ツバサがナイト言ってるのはあくまで自称に過ぎないのが分かる。
所詮ツバエルなんていうのは自称ナイトと物事の分別が出来ない赤ちゃんという空虚なカップリングでしかない。
視聴者の悪口を言うつもりはないがツバあげ、ツバエルで喜んでる人はあんまりひろプリ見てないんだろうなと言わざるを得ないカップリングの中身の酷さだった。
④キャラクターの掘り下げ不足
これはもうメインキャラはぼ全般に言えることだ。
ソラはヒーローを志していると言いながらどんなヒーローになりたいのか、シャララ隊長から脱却してヒーローとは何なのか設定がなかったように思う。
「ヒーローガール」という適当に作った設定に対して中身を最後まで考えてなかったとしか言えないだろう。
事前に答えを用意してなかった制作陣の失敗としか言えない。
ましろは比較的よかったと思う。
尺も多めに取られていただけあって無難な着地だった。
他が酷すぎるだけかもしれないが。
あげはは「最強の保育士」を目指していると言いながらどうすれば最強の保育士になれるのかが欠如していた。
それに最初から保育士の夢を叶えていたばかりにそれ以上深掘りするのが難しいキャラになっていた。
今作の中では1番販促のために出したキャラという印象だった。
夕凪ツバサとの「最強のコンビ」も記憶では劇中で最終回合わせても2回ほどしか言ってない。
カップリング回(と言ってもそこまでカップリングしてないが)も3回しかなかったので掘り下げになるほどのこともしてない。
エルちゃんは販促のために赤ちゃんでいなければならないのとストーリーのために成長しなければならないのがどっちつかずになっていた。
プリキュアにするのが最初から決まっていたのなら中盤ではーちゃんよろしく成長させればよかっただけの話だ。
赤ちゃん妖精枠とプリキュアを兼ねようとしたのがそもそも間違いだったのだ。
⑤男プリキュアがノイズであること。
今作最大の失敗点。
プリキュアは男入れるだけでこんなに動きにくく、センシティブな要素だらけになるんだなと感じた。
一つ目は女性キャラと断りなく同居してる点。
8話でましろが男がいるとは知らずに異性と同居していたことになる問題が生じる。
ヨヨはそのことを一切ましろに知らせなかったという問題も込みである。
そのことに関してその後フォローは一切なかった。
ツバサが女だったら何の問題もなかった話だ。
女児向けアニメとしてだけでなく東映アニメーションが教育番組としての側面も誇っているのにも関わらずだ。
あまりに無頓着である。
二つ目は出来ないことが増える点である。
男キャラと女キャラが同衾するのはNGだからか、まほプリ以降恒例だったパジャマパーティー回をやらなかった。
また男プリキュアに男だと強調する格好はNGだからか浴衣を着た夏祭り回や着物を着た正月回もやらなかった。
毎年恒例のプリキュアかるたはこれまで書き下ろしの着物を着たプリキュアたちがデザインされていたのにやはり男プリキュアに袴はNGだからか着物姿も廃止されて変身後の姿だけになっている。
ラッシュガードは男女両用だからか海水浴は普通にあったので尚更そう感じる。
出来ないことが増えるのに価値観アップデートではまるでギャグみたいだ。
三つ目は夕凪ツバサとしてのキャラ付けの失敗。
夕凪ツバサ、正直言って褒めるところが一つもない。
キャラデザも、他のメインキャラが可愛い女の子だらけなのもあって、「女の子じゃない何か」になってしまっている(鳥だし)。普通にボーイッシュ女の子でよかったのではないか。
声も特に叫ぶ時が猿みたいにキーキー聞こえる(村瀬歩の演技だって他にあっただろ)。
他のキャラへの接し方もクソガキとしか言えない不快さ。エルちゃんの扱いも先述の通り。
酷いものである。
空を飛ぶのが夢だと語っておきながらプリキュアになった途端夢が叶ったと言い出す有様だ。
そんなプリキュアは今まで一人としていなかった。
というか夢についてはこの20年一貫したルールはなかったのか。
例えば春野はるかは真のプリンセスに近づくためにノーブル学園在籍時からひたすら勉強に励んでいたしプリキュアになってもそれは続けていた。
「自分で努力しないで夢が叶ったとは言わない」とも言っている。
夕凪ツバサはプリキュアになって夢が叶ったと思い込んでいる。
他にも花寺のどかは病弱の身体のことを気にしていて、初変身でプリキュアになったことで「自分の身体じゃないみたい」と喜んではいた。
それでもプリキュアになったからといって自分の身体のことはトレーニングを続けて中盤以降は体力不足の問題も解消しているくらい自分のことは自分で解決していた。
それなのに夕凪ツバサはどうだ。プリキュアを自分の一部として認識しているザマだ。プリキュアになったら夢を怠けていいわけじゃないだろ。
その後は38話でなりゆきで決まった賢者の仕事(これもヨヨがなれって言ったからなったくらい唐突な展開)も別に賢者がどんな仕事するのかは一切触れられてない。
最終決戦のバリヤも賢者とは直接関係なかった。これもツバサ一人だけの功績である。
将来の夢に無頓着なのも男プリキュアだからなのか。
そんなことするくらいなら出さない方が良かった。
四つ目は制作陣からの優遇である。
鷲尾Pが発案。しかし本人も本気で通るとは思ってなかったらしく現場が無理と判断したらボツにする予定だった旨が『プリキュアアニバーサリーブック』に書いてある。
小川監督(兼シリーズディレクター)はそんな本来通るはずの無かった男プリキュアを主役級の特別扱いすることで通してしまったのだ。これもアニバーサリーブックに書いている。
男プリキュアは男であるからして最初から特別扱いされて生まれた存在である。
一人だけデビュー戦が前後回、一人だけ空を飛べる、一人だけハーレム展開などなど…。
主人公でもなく新商品の販促の絡む追加戦士でもなく特別な事情もなく特別扱いされるプリキュアなどこれまで記憶する限りいなかった。
男であるから男プリキュアが優遇されるというなら最初から出さない方がよかったとしか言えない。
脚本がしっかりしていれば綻びも最低限で済んだんだろうが金月龍之介ではそれも無理だったのが1年通して伝わってしまった。
いい加減な作り、唐突な展開の連続、積み重ねの欠如によるインスタントすぎるエモの連続などなど…。
駄作としか言えない作品だった。
以上がひろプリが駄作といえる原因である。
さてここまで述べるだけだとアンチみたいになってしまうので良い所も挙げて行こう。
①音楽
②キャラクターデザイン
③声優のキャスティング
①音楽
深澤恵梨香氏のBGMはどれも素晴らしかったと思う。
変身時のBGMとアップドラフトシャイニングのBGMは特に好きだ。
②キャラクターデザイン
斎藤敦史氏のデザインは『ラブライブスーパースター』の時から拝見しているがシリーズ全体で見るとクセの強いデザインをしている。動いてる時に可愛く見えるのが特徴だと思っていて作画して初めて真価を発揮するデザインだと考えている。
ソラは美墨なぎさオマージュらしくスポーティーなボーイッシュ+青キュアを上手く融合していると思う。
ましろは雪城ほのかオマージュらしく女児ウケする女の子のデザインだ。ふんわりした雰囲気が良い。
あげはは少し年上を意識しているだけあってお姉さんらしく見えるデザイン。赤い耳のピアスがいいアクセントになっているだろう。
エルちゃんは可愛らしい赤ちゃんのデザインになっている。シフォン、アイちゃん、はぐたんの中では一番好きかも。
③声優のキャスティング
関根明良さんは『風都探偵』のときめから拝聴しているが、ときめとは真逆の声だと思った。
元気でなおかつ礼儀正しさが出ていて結構好きな声である。
加隈亜衣さんはヒープリのラビリン以来のキャスティング。まさか妖精役一度やってからプリキュアになれるとは思ってなかった。
この可愛い声は一作で終らせるには勿体ないと思ってたので今回のキャスティングは放送前から嬉しかった。
ソラとは良い対比になっている。
オールスターズFや全プリキュアライブでラビリン役でも出てくれたのは嬉しいサプライズだったよ。
七瀬彩夏さんはこれまで存じ上げなかったが、あげはのフランクなお姉さんの声にぴったりだと思っている。
小清水亜美との共演叶うといいですね。
古賀葵さんは『かぐや様』の頃から知っている。次第にエルちゃんの赤ちゃん語をモノにしていったのは素直に評価したい。
エルさん形態の演技はもっと聴きたかった。
以上がよかったところだ。
ひろプリ、オールスターズ客演路線をキャラ単体で出来る最後のタイミングだったのでそれをやらなかったのはどういうつもりなのかは聞いてみたかった。
作画に関しては同時期にプリキュア5の配信と見比べることもあって、作画レベル落ちたかと思う有様だった。(個人差あるだろうけど)
いくらでも名作になれる要素はあったはずなのにそれを全部捨てて男プリキュアを贔屓して積み重ねもやらず唐突なことばかりやって最悪の結末を迎えた駄作になってしまった。
これでも放送前は最高傑作目指せると思っていたんだよ。
出来ることなら今からでもやり直せるならやり直したいものだ。
スタッフでもないから何もできなかった自分の無力さを呪いたいくらい。
ひろプリ、ただただ残念だよ。