ウルトラマンブレーザー 総括

 これまでのニュージェネレーションウルトラマンで良くも悪くも恒例となった連続調のストーリー、インナースペース、登場怪獣の毎作に及ぶ流用。

 それら全てにメスを入れたのが『ウルトラマンブレーザー』である。

 オムニバス調で1話完結ベースの物語、インナースペースの実質(部分的)廃止、新規造形による20体近くの新怪獣たちを用意した田口監督による意欲作だった。

 ニュージェネ以降ずっと願っていた「こんなウルトラマンが見たい」を叶えてくれた作品である。

 

 まず最初に1話完結のオムニバス形式の物語について。これまでのニュージェネでは良くも悪くも恒例だったライバル枠(ジャグラー枠なんて呼ばれてたりもする)を廃止して縦筋はあまり進まない方向性の話をしていた。

 もちろん全話通してファーストウェイブ、セカンドウェイブといった敵襲、V99という謎といった具合に最終章へ向けての布石作りはしていたが、それくらいだ。

 ニュージェネウルトラマン平成ライダーを意識したあまりウルトラマン本来の持ち味が損なわれていたように感じていたのでブレーザーはその辺ちゃんとやってくれたと思う。

 おかげでオムニバス形式の物語が楽しめウルトラマンらしい作風になっていた。

 

 次にインナースペースの廃止。

 インナースペースはどうしてもロボットをコクピットで操縦してる感が出てしまう。

 ウルトラマンなのにロボに乗ってるみたいな問題点があったので、変身者がこっちを向いて玩具をガチャガチャ弄ってるのを今作では廃止して、ちゃんとウルトラマンとして見せていたのが特徴的。

 ただ、これはスタッフ的にはあった方が玩具の販促がしやすいということが、後々手首だけインナースペースを映すというやり方が差し込まれて、分かったので一長一短なのだと思う。

 個人的には無い方がいいんだけどなあ。

 

 最後に怒涛の新規怪獣たちの登場。これが1番すごかった。制作発表会でお披露目になった時思わず声が出るほど驚いた。

 近年の円谷はとにかく予算を抑えるというかケチるというか...特に怪獣のスーツに関してはここ10年近く新怪獣は5体割る年も少なくなかった。

 そんな中での大盤振る舞い、驚かない訳がない。

 見たこともない怪獣が一挙に集結する絵面はワクワクせずにはいられない。

 それほどの衝撃が走ったのを昨日のことのように覚えている。

 これまで既存怪獣の流用ばかりでグビラやゴメス等をどう差別化していくか、去年よりマシな扱いをされているかばかり気にしていた。

 もちろん今の円谷の事情的に毎年新規怪獣をバンバン出せとは言えないのは分かっている。

 しかし、平成ウルトラマンをリアタイした世代でビデオやDVDで昭和ウルトラマンも見てきた私にとっては「見たことない新規怪獣を相手に防衛隊とウルトラマンがどう攻略するのか」というワクワクはウルトラマンを見るにあたっての最大の醍醐味だと思っている。

 そんな中でのブレーザーの新規怪獣大盤振る舞い、ワクワクしないわけがない。

 そして期待通りバザンガ、ゲードス、タガヌラーと怒涛の新規怪獣回が続いたのはもはや懐かしさすら感じる感動があった。

 願わくば毎年のようにこの路線は続けてほしい。

 予算的には難しいだろうから、多少は妥協して毎作の新規怪獣数を増やする方向でこれからもやってほしいものだ。

 

 既存怪獣の扱いもよかった。

 原作では操ったウインダムのパイロットくらいの扱いでしかなかったカナン星人にフォーカスを当てたり、初のウルトラマン戦で本編クライマックスまで圧倒的な強さを誇ったガラモンだったり、現代向けに登場方法をチューンしたガヴァドンだったり、原作とはテイストを変えてきたギガスだったりとどれもよかった。

 

アースガロンについて

 『ウルトラマンZ』のセブンガー以降恒例となった味方ロボット怪獣枠。

 今作はメカゴジラとアーストロンを足して2で割ったようなフォルムが特徴的だ。

 活躍が不遇だとか販促が足りてないだとか言われがちだけどそんなことはない。

 レヴィーラ戦、ニジカガチ2戦目、ゲバルガ2戦目は特にアースガロンがいなければ勝てなかったと言えるくらいアシストをしている。

 怪獣の撃破数を見てもキングジョーSCが特別多いだけでセブンガーはギガスくらいしか倒してないしアースガロンとさほど変わらない。

 イルーゴやデルタンダルB等を撃破している分むしろ多い方だろう。

 販促が足りてないという話もアマゾンのセールランキングで1位を取ったいう話を聞くくらいには売れているので、販促も申し分なかっただろう。

 

 劇中の扱いについて、特空機が理想的な扱いすぎただけで差別化しようとするとアースガロンのような立ち位置になってしまうのはある意味仕方ない気もする。

 強そうな見た目をしているから戦績とのギャップが生じるという話なら、某ツイッタラーさんの言うように今こそビルガモを出すべきではないだろうか(私も好き)。

 強そうな見た目ではないけれど帰マンを追い詰めるくらいには強い、良いギャップもある。

 来年のロボット怪獣枠がどうなるかも楽しみだ。

 

 

大怪獣首都激突

 劇場版ウルトラマン映画としては4年ぶりになるのだろうか。

 スクリーンで見るのに耐えるだけの特撮映像がそこにはあった。

 例えるなら「ラーメン屋に行きラーメンを頼んだらラーメンが出てきた。」当たり前のことかもしれないが昨今そういう作品の方が少ないだけに感動すらあった。

 国会議事堂を破壊するのはミレニアムシリーズのゴジラ以来だろうか。現実では壊さないような建物を怪獣が容赦なくぶっ壊す映像はやはり「特撮を見ている!」と感じさせてくれるようで素晴らしい。

 ストーリーは序盤の対タガヌラー、ズグガン戦から始まりゴンギルガン編へとシームレスに移行していく。25話のその後らしいSKaRDの活躍が描かれていた。

 ゴンギルガンは少年の思いが意思のない細胞と結びつき暴走するまさに妖骸魔獣の二つ名に相応しい怪獣だった。

 後付けとはいえバザンガ戦の特殊弾やゲバルガ戦で使ったチルソナイトスピアの出自が明らかになるなどちゃんとテレビ本編の地続きであることが意識されていた。

 ニュージェネ映画だと一体化していたウルトラマンが故郷に帰ったり正体バレしたり今後の身の振り方を考えるといった後日談的な作りが多かっただけに劇場版ブレーザーは特にそういった要素もなく予算と規模感をリッチにした「26話」という作り方が徹底されていたと思う。

 ラストにゲントの家で焼肉パーティーしながらヒルマ一家に第二子が誕生する祝福ムードで終わっているのが「守りたい日常」を象徴しているようで締め方としてもよかった。

 見たいものをストレートに見せてくれたので特に不満はないのがよかった点だ。

 

 

 ウルトラブレーザー、「こんなウルトラマンが見たかった」という願いを叶えてくれただけで万々歳な作品である。

 願わくば2024年以降もこんな作風のウルトラマンが見たい、そんなふうに思わせてくれた作品だった。

 果たして2024年のウルトラマンはどんな作品が来るのか?今から楽しみだ。