仮面ライダー鎧武 総括

 『仮面ライダー鎧武』完走しました。リアルタイム以来二度目の完走です。

 見返してもやはり面白かった。

 2話ごとに一体の怪人を消化する2話1部構成を廃止したライダー初の連続ドラマ形式のストーリー、龍騎以来の多人数ライダー、玩具もちゃんとギミックを魅せていて改めて出来がいい作品だったのが分かる。

 クウガほどではないにしろ小物アイテムの出自や設定について説明していたりと細かいところまで気が効いている印象だった。

 主演の佐野岳本による素面アクションもいい。

 

 脚本がまどマギ虚淵玄氏なこともあってまどマギとの共通点もいくつか見受けられた。

・2択の運命に抗うために神となって第3の選択肢を選んだ主人公

・敵の正体は人間

・次々退場していくメインキャラ

等等。

 まどマギと鎧武の共通点を見出して見ていくのも楽しかった。

 

 最強フォームの設定として使う度に人外化していくという設定も作品とよく合っていた。

 化け物になっていって人々から拒絶されるとしても戦い続ける主人公、葛葉紘太というキャラ性がよく出ていたと思う。

 異形の存在となっても自由と平和のために戦う戦士はまさしく仮面ライダーであると言えるだろう。

 

 戦う敵も次々変遷していってダレない印象だった。

 1クール目はビートライダーズ同士の子供vs子供→年明けから子供vsユグドラシルという大人→3クール目からは人類vsオーバーロード→クライマックスは紘太vs戒斗と一年通して変化していき視聴者を飽きさせない工夫があった。

 これは翌年以降からのライダーには欠けていた要素であり一体の敵キャラで半年近く持たせるみたいな例がいくつもある現状だと鎧武は上手く敵を変えながら一年持たせたなと思ったものだ。

 

 鎧武がこれだけ面白く玩具も売れた作品になれたのはキャスト、スタッフの頑張りはもちろん虚淵玄氏を始めとしたニトロプラスの脚本家陣が真面目に書いたおかげも大きいだろうと考える。

 鋼屋ジン氏による最終回もよかった。呉島光実のアフターとしてこれ以上ない作りだった。

 いい加減な作りにしている作品が近年見受けられるのを考えると鎧武は本当によく出来ていたなと思う。

 

 

ドライブ&鎧武

 鎧武最後の映画。

 個人的にアルティメイタムからフルスロットルまで冬映画はリアルタイムで見れてなかったので今回の視聴でようやく冬映画を制覇することができた。

 始まりの男となった紘太が倒され、地球を取り込もうとするメガヘクスと地球に残された光実達の戦い。

 残された者たちで懸命に立ち向かう様は鎧武本編にも通じるものがあった。

 旧斬月でゲネシスドライバー持ちのデュークを倒す貴虎はやはり強すぎる。真面目なシーンなんだけど思わず笑ってしまった。

 紘太復活からのBGM『Just Live More』はアツい。ここからの逆転劇もカタルシスがある。

 テレビ本編から一貫して紘太は最後の最後で頼りになるヒーローとして描かれているのが印象的だ。

 メガヘクスによって正確にコピーされた戒斗が速攻メガヘクスを裏切るも忠実に作った結果として良すぎる。

 キャラクターショーでもそうなのだが駆紋戒斗は誰かの下につく人間ではないというのが1年間通して一貫している。

 メガヘクスに対して「バラバラでも個であるからこそ新たな可能性が生まれる」と啖呵を切って、初めて会ったドライブに「お前らいいチームだ」と評されるのは鎧武本編を完走してから聞くと感慨深いものがあった。

 地球を去ろうとする紘太と舞に対し光実たちが引き止めるラストもよかった。ここはテレビ本編最終回との対比もあるのだろう。

 

 テレビ本編終盤でドライバーとロックシードが次々と壊れていきテレビ最終回時点で残っていたのが光実の持つ龍玄用の戦極ドライバー、ブドウ、キウイ、スイカ、メロンエナジー、ローズアタッカーくらいしか地球には残っていなかった。

 Vシネや小説を見据えてかここから徐々に使えるドライバーやロックシードが増えていくのは、少ない戦略でやり繰りしていく中で新しい力が手に入るライダー的展開は、オーズ序盤などを見ているようでちょっとワクワクする。

 映画終了時点で斬月用のドライバー、ゲネシスドライバー、メロンロックシードが増えた形になる。

 『ドライブ&鎧武』、鎧武のアフターとしていい映画だった。

 

斬月/バロン、デューク/ナックル

 スピンオフ、後日譚からなるVシネマ

 斬月/バロンはテレビ本編中のスピンオフ、貴虎の交友関係から始まるユグドラシルの秘密、戒斗のそっくりさんによる入れ替わり回という1話完結でありそうなネタを持ってきた。

 まだ戒斗が生きてて平和だった頃の沢芽市はもはや懐かしく感じる。

 テレビ本編では尺の都合で出来なかったネタをやりたいのが分かる。

 

 デューク/ナックルは前日譚(厳密には1クール目中の話だが)と本編後の後日譚。

 黒の菩提樹という組織は小説に向けた舞台整理のための要素という印象を受けた。

 独自に動き、黒の菩提樹のトップである狗道供界を3流と評し倒す凌馬にはダークヒーローらしさを感じる。

 戒斗亡き後、生き延びたザックが戒斗の目指したものを必死に見つけようとする姿には泥臭さを感じた。

 

 血糊によるちょっとグロめなシーンやカルト集団による自爆テロといったニチアサでは難しそうなテーマが仕込まれていてテレビ本編では出来なかったことをやろうとしているのが伝わる。

 Vシネ限定のフォームやライダーはテレビ本編の整合性を考えながら出しているのが印象的だった。

 リンゴロックシードは信用できない力は要らないという戒斗の信念に寄って砕かれるし、ウォーターメロンアームズはそんな物なくても貴虎は強いので使われないという理屈づけがされている。

 

 『ナックル』終了時点でザック用の戦極ドライバー、クルミロックシード、マロンエナジーロックシードが新たに使用可能に。

 この時点でライダーは3人体制になったわけだ。

 

 

小説 仮面ライダー鎧武

 『ナックル』のその後のお話。

 紘太が出てくるのは最後の最後だけ。光実や貴虎など地球に生きている者達だけで狗道供界の野望に抗い打ち砕くストーリーになっているのがいい。

 なぜならテレビ本編最終回や『ドライブ&鎧武』など諸々の都合や葛葉紘太の登場を抜きにしたら本当はこういう展開にしたかったんだろうなというのが薄々伝わってくるストーリーだからだ。

 

 狗道供界は『デューク』だとオカルト染みた幽霊のような印象だったが真相が分かると一人ぼっちになって成仏も出来なかった哀れな三流科学者に印象が変わる。

 やらかした規模はデカいが彼もまたヘルヘイムの侵食とユグドラシルの実験によって人としての生き方を断たれた被害者であったということだ。

 

 終盤まさか門矢士が出てくるとは思いもしなかった。「世界」規模の話になるならそりゃ出てくるよな〜!と思いながらまさかの登場を楽しんでた。

 クウガからドライブまでチラ見せ程度ではあるが出てきたのも、ここまで平成ライダーを追ってきてくれたファンに対するサービスだと思って嬉しくなった。

 

 冬映画も春映画も夏映画も、全てを包括して無かったことになんかさせないという意地を感じた。

 

 この時点で新しく増えた戦力は鳳蓮用のドライバー、ドリアンロックシード、城之内用のドライバー、ドングリロックシード、光実用のドラゴンフルーツエナジーロックシードになる。これで地球に残っているメインキャラは全員ライダーの力を取り戻したことになるわけだ。

 

 小説鎧武、読んでよかったと思える一冊だった。

 

 

舞台斬月

 ライダー初の舞台化。やはり鎧武の勢いはただ事じゃないのが分かる。

 テレビ本編の成長を踏まえた貴虎が見れるだけでも見た甲斐があった。

 テレビ本編の没案だった「ビートライダーズが反政府派の子供だった」とか「戦極ドライバーを使い続けるとインベス化する」とかの設定をここで使ってくるのかと感心したよ。

 舞台特有の役者を顔出しさせるために中々姿を変えないという縛りも「変身し続けるとインベス化する」という設定にすることで精神的に葛藤を演出しながら理由づけをしているのは上手いと思った。

 

 今作終了時点でメロンロックシードはラスボスに盗られたので喪失。紘太経由でシン・カチドキロックシードを手に入れた。

 『ドライブ&鎧武』で手に入れたドライバーはロックがかかっていないので誰でも斬月になれるってことでよかったのかな。

 今回手に入れたプロト龍玄用のドライバーはインベス化の恐れがあるので、この後日本に戻った貴虎はちゃんと正規用のドライバーを調達したと思いたい。

 

 ゲネシスでも強い貴虎がカチドキになったら誰も手をつけられないくらい強くなってしまうの笑っちゃうんだよな。

 

 

 

グリドンVSブラーボ

 2023年現在で制作的にも時系列的にも鎧武最後に位置づけしている作品。

 一流のパティシエになって調子に乗った城之内に(勘違いもあったとはいえ)鳳蓮が喝を入れに来るお話。

 最後は師弟愛で締めるのもらしい展開。

 初瀬ちゃんが精神体(?)で城之内に手を貸してくれる展開はよかったよね。1クールとは2人の友情は確かにあったんだと再確認できる。

 カチドキを手に入れて最強になった貴虎。初登場のライダーを一方的にボコボコにする様は面白すぎる。

 ヘルヘイムの変種と出処不明のロックシードを使う女。おそらく今後を見据えて用意したギミックなのだろうがここから新作が作られてないので今のところ無の設定になっている。活かされる時が来てほしい。

 

 鎧武、10周年なので何かしら企画が動いてほしいと思っている。やはりテレビ本編を否定しないVシネをやってくれるのが理想かな。

 鎧武、やはりよく出来ている作品だし大好きな作品であるのを再確認できた。

 鎧武の歴史はこれからも続いていってほしい。