仮面ライダーゴースト 総括 〜軌跡!ゴーストの全て!〜

 平成ライダー全部見るという目標で始めた平成ライダーラソンも気付けば17作目。

 本作『ゴースト』はリアルタイムでツギハギなセリフ運びや絵面のおかしさ等出力の下手さが目立ち奇天烈な作品だった印象。

 なので正直平成ライダーラソンするという目的がなかったら二周目する気は起きなかった。

 

 二周目していく中で「なるほど、ここはこうだったのか、このキャラはこういう意味でこういう発言をしていたんだな」と予めテレビ本編のその後の展開や設定を分かっているのでリアルタイムよりもスッと理解できた。

 例えば序盤アランたちの言う「完璧な世界」や終盤のコピーマコト兄ちゃんといったのが挙げられる。

 二周目する前は微塵も思わなかったが、ニチアサ内外でいい加減な作りをしている作品がいくつか見受けられるようになったこともあり、その分『ゴースト』はやりたかったことは伝わるし作品全体での一貫性は感じられるので誠司な作品に見えるようになったのは二周目して1番大きな収穫だった。

 けど二周目するの前提みたいな作風なのに二周目させる気のない出来栄えなのはいかがなものかとは思う。

 

 これも二周目してから分かったが終盤1クールはひたすらアデルとガンマイザーとばっかり戦っている印象だ。

 時折イゴールら眼魔も襲ってくるが非戦闘員キャラでも撃退できるくらい弱体化してるので正直敵ではないなと。

 長々ラスボスで物語を引っ張るという意味では後の作品のラスボスであるクロノスやエボルトが例に挙げられがちだがアデルwithガンマイザーも中々引っ張ってんだなと見てて感じた。

 それでもガンマイザーのスーツは7体使ってプロップも相応数作っていたので後々の作品よりは絵作りは頑張っていた印象だ。

 

 やりたいことは伝わるがやはり出力が下手というか劇中で言いたいことを圧縮しすぎた印象だ。

 例は2つある。

 1つ目は構成の稚拙さ。

 例えば中盤「ガンマイザーが強くて今の自分の力じゃ太刀打ちできない...」っていう話をしているのに何故が格下の敵をボコってスッキリした風になるのはおかしい。それも連続で2回もあった。

 「ガンマイザーを破壊できるのはムゲン魂だけ」その設定を守りたかったのは分かるがそれにしたって見せ方はあったはずだ。

 ネクロムやグレイトフル魂でもガンマイザーには優勢に戦えるのを見せた後でムゲン魂でトドメ。この流れにすれば少なくとも格下ボコってスッキリの流れは避けられただろう。

 2つ目は圧縮言語だ。

 例えば2クール目のアランの言う「完璧な世界」は「人が傷を負うことも老いることも死ぬこともなく感情も持たないので争いもない世界」という意味。

 だが、これは本編終盤でやっと設定が開示される話。少なくともネクロム登場直後でそんな話はしていなかったはずだ。

 それなのに口を開けば「完璧な世界」しか言わない。botかと勘違いするレベル。

 製作陣の頭の中では全ての設定の意味が分かっているのだろうが、視聴者は情報開示された設定しか把握しようがない。

 正直情報の開示の仕方は下手であったとしか言えないと私は考える。

 「人の可能性は無限大」も同様だと思っている。

 

 

平成ジェネレーションズ

 座組としてのゴースト最後の冬映画。

 公開初日から観に行ったのを覚えているがライダー映画としてやはりインパクトも強くいい映画だった。

 アクションも豊富で見どころも多く、カッコよく動くヒーローものとして坂本監督らしさのよく出てる映画という印象だ。

 前後作の垣根を超えてドライブ、鎧武、ウィザードも勢揃い。 

 竹内涼真白石隼也がちゃんと進ノ介、晴人として出てくれるのは嬉しいところ。

 それだけに佐野岳が出られなかったのは勿体なさすぎる...。

 坂本監督のアクションで動く佐野岳という意味でも、進ノ介や晴人と同時に変身する葛葉紘太という意味でも大きな減点対象だよなあと。

 坂本監督のアクションで動く佐野岳は一度どこかで叶ってほしい願いだ。

 

 主題歌メドレーや『B.A.T.T.L.E G.A.M.E』など挿入歌でも盛り上げてくれるのでボルテージは上がりっぱなし。

 

 マイティブラザーズXXのサプライズ先行登場は平成一期の最強フォーム先行登場を思わせるようでアガッた。

 

 山本千尋はまさかここからウルトラマンジードに出たり大河ドラマに出たりブレイクするとはこの時は思ってもみなかった。

 

 ゴーストの映画として見れば。ゴーストのテーマである「命」とエグゼイドのテーマである「医療」が絶妙にマッチしていて患者(≒アカリ)を救うということで両者の目的が一致していたのも高評価だ。

 何故かいきなり帰ってくるマコト達はちょっと引っかかったが全体で見ればそこまで気にはならない塩梅。

 タケルがテレビ本編で生き返ったことでタケルが死にかける・死ぬかもしれない状況に置かれることで出る緊迫感は確かにあった。これはテレビ本編中幽霊であったからこその対比もあったと思う。

 

 フォームチェンジも坂本監督らしくゴースト派生フォーム以外は全部出したのはさすがというべきか。

 『ゴースト』と坂本監督は相性がいいよなと思わせてくれる一作だった。

 坂本監督が撮る平成ライダー映画は実はこれで最後だったのはちょっと意外。

 よく考えればここからは『ジード』を始めとするウルトラの方にウェイトを置いていたのでそりゃそうではあるんだけどね。

 リアタイ補正抜きにしても満足度の高い映画だった。

 

 

Vシネ『仮面ライダースペクター』

 平ジェネの後にあたる『ゴースト』最後の映像作品。

 1番大事な点であるマコト兄ちゃんが大量に存在する「デザイナーベイビー」の一体に過ぎなかった話、そういう話はテレビ本編の間にカタをつけてほしかった。

 そのせいでテレビ本編のコピーマコトが意味不明になっていたのはどう考えても作品的にマイナスでしかない。

 テレビ本編終盤はVシネの布石を作るための場ではないというのを高橋Pと福田卓郎氏にはもっと早くに気づいてほしかったなあと。

 よく『ゴースト』擁護の意見で「Vシネまで見てから判断してほしい」という意見があるがそれはつまり「テレビ本編だけでは擁護出来ないクオリティ」と言ってるのと変わらないのではないかと思う。

 

 その一点を除けばVシネは結構良かった。

・自分の出自に苦悩し罪を背負って生みの父親であるダントンの野望を止めるマコト。

・テレビ本編でアデルから「家族を持て」と言われたアランがマコトに私ならカノンを幸せにしてみせると告白して、全力で友を止めようとした点。

・中和剤パッチは一時凌ぎでしかなかったが、眼魔世界の大気を変えるために全力を注ぐアカリたち。

 など、見どころは多かった。

 

 感情を総括するムゲン魂と対になるように、七つの大罪を総括するシン・スペクターというのもアイデアが面白かった。

 友情バースト魂も結果こそ伴わなかったが、ディープスペクターを凌ぐ戦力であることを証明できた形態だと言えよう。

 

 ダントンはこの時点では独善的で強権的な人物として描かれていた。

 眼魔世界の住民のためを想った信念は立派だったが行動と結果が伴っているとは言い難い。

 マコトのことも子供のように大切にしているが、それは実験の数少ない成功例だからであって綻びがあれば劇中のカノンのように処分しようとしたんだろうなというのが推測できる。

 クロエに関しては小説でも言及するがVシネの時点では無から生えた女、ダントンの実験の犠牲者としか言えない。

 

 『Vシネ スペクター』、ゴーストのやりたかったことの片鱗を見せた作品だった。

 

 

 

小説仮面ライダーゴースト

 眼魔世界の始まりからタケルの息子アユムの未来まで描く壮大な物語だった。

 これがやりたかったんだな福田卓郎

 

 各キャラの総評について。

 アドニスはひたすら不憫な人生だったなと。妻が病でこの世を去り、息子も殺され、たくさんの同胞も同士討ちで死んでいった。

 そりゃテレビ本編はああいう性格になるよなあ。

 最後にアランが人間世界に興味を示すように手引きが出来たのは幸いか。

 

 グレートアイは自分は神ではないと言ってはいるがやってることは神と変わらないのでは。

 アドニス達を助けるならせめて赤い大気の問題くらいどうにかしてやれよとは思う。そのせいで大勢死んだし。

 中途半端に助けて後は自力で解決してくださいは薄情な奴だと考えてるよ。

 

 ダントンは最初から独善的で強権的なやつではないと分かったのは収穫だった。

 強化人間を作る過程で人体実験に協力してくれた同胞たちの無念を背負って戻るに戻れなくなったのが切ない...

 Vシネでの見方も変わってくるよ。

 

 さて問題のクロエ。

 いわゆるVシネで「無から生えた女」の訳だがそれがなんでタケルと結婚まで至るのか理解はできても納得はできないなと。

 自分を犠牲にしてでも他者を助けてきたタケルと、命が尽きるその瞬間まで他者のことを労わろうと努力するクロエという構図で2人は似た者同士だねっていう構図にしたいのは理解できる。

 ただクロエ自体そんなに出番ある訳じゃないしそんなに尺のないキャラがメインキャラとくっつくのがなんか納得がいかないんだよな。

 

 多分自分はVシネから生えたポッと出のキャラがテレビ本編から見てきたキャラと深い関係になるのが許せないんだろうなと思う。

 『ドライブ』の西堀令子はテレビ本編からいたしVシネ『マッハ』でもメインヒロインとして扱われてたので半ばバグ的に納得することが出来たんだけどクロエはそうじゃないのでこういう感想にもなる。

 

 アカリはイゴールとでもくっついとけみたいな扱いだったしやりたいことのためにおざなりになってる部分があってそこは残念な印象。

 

 『仮面ライダーゴースト』、とにかく変な作品だが作品の出来栄えはともかくオカルトに見えてSFをやりたいのは分かるし、後々の作品よりも真面目にやろうとしていたのは伝わるので2周目してテレビ本編の評価が上がったのは完走してよかったところだ。

 Vシネ、小説まで含めれば高橋Pと福田卓郎のやりたかったことの全てが理解できたので全部見てよかったよ。