仮面ライダーウィザード 総括 希望であり続ける魔法使い

 『仮面ライダーウィザード』全話完走しました。

 人々をファントムに変えないために絶望を希望に変える魔法使い、操真晴人=仮面ライダーウィザードの物語。

 晴人最大の魅力はやはり「等身大の青年が無理してでもみんなの希望になろうとする」ところだと思う。

 魔法の力を手に入れたのは後付けで元から人間離れしてたわけでも強大な精神力があったわけでもない。

 ファントムを増やす儀式=サバトで希望を捨てなかっただけにすぎないのだ。

 晴人本人はごく普通の青年という設定が魅力的だと思う。

 そんな晴人と白い魔法使いの最も違うところは凛子や瞬平、仁藤といった頼れる仲間たちがいるところだろう。

 魔法を使えたりコヨミを救いたい共通点はあっても両者の存在は決定的に違う。

 45話で目的のためにゲートを囮に仕掛けた晴人に瞬平が喝を入れたのが顕著だ。

 

 本作は要所要所でも最終章でもただハッピーエンドを迎えないのが今作の特徴でもある。

 ゲストキャラの大きな願い(例:和菓子屋の経営を立て直す)は叶わないが小さな希望は残る(例:弟子が他の店で自分の店の味を残す)といった構成が印象的だ。

 それはメインキャラにも適用されており晴人は結局コヨミを救えなかったがコヨミが遺したものはあったり、仁藤は研究のために命がけでキマイラを宿し続けたが人々を救うためにキマイラを手放すだったりと誰1人大きな願いを叶えられていない。

 震災からまだ一年ほどしか経っておらず作品全体でどこか暗い影があったのが印象的だ。

 それでも希望は残っているのが『ウィザード』の特徴といえるだろう。

 

 構成として気になったのは最強フォームのインフィニティースタイルの出し惜しみだろうか。

 晴人自身の魔法でありノーリスクで最強クラスの力を持っており使わない理由がない。

 しかし2話1部構成という都合上前半のうちに怪人を倒せない(32話のボギーなど一部例外はある)ので使えば瞬殺できるような怪人(38、39話のバハムートなど)相手でもインフィニティーを中々使わず苦戦する構成になったのは気になる点ではあった。

 「魔力の消費が大きすぎて無闇に使えない」みたいな設定でもあれば見ているこっちも納得はできるがそういう設定もないので所謂舐めプと言われるのも否定できない。

 クウガから12年続けてきた一体の怪人で2話持たせるという「2話1部構成」がこの辺で一度限界を迎えたのは事実だろう。

 ここから鎧武が連続ドラマ方式になったのはある意味当然の結果かなと思う。

 しかしそれも10年経つともはや懐かしく感じ、令和ライダーの現状を見ると『ウィザード』も良くできた構成だったと思い知らされた。

 今の『ガッチャード』はまた2話1部構成をやろうとしているのでそこは期待したい。

 

特別編

 52、53話は今までの平成ライダーを総括する特別編という構成だった。

 石田監督によるギャグテイストの強い冒頭から怪人に変身する少年少女の苦悩する物語でもあった。

 フォームチェンジや必殺技も次々披露されヘタな春映画よりも豪華な回であった。

 関俊彦氏本人の声で喋る電王や井上正大氏本人が演じる門矢士=ディケイドなどファンサービスも欠かせない。

 この世界から出たいという少年少女の大きな願いは叶わなかったが、怪人ではなくライダーになれるかもしれない希望は残ったという意味で特別編も『仮面ライダーウィザード』の物語であったといえる。

 二話一部構成の最終作に相応しい最後だった。

 このまま続いて『鎧武』も見ていきたい。

 

 

天下分け目の戦国MOVIE大合戦

 晴人とコヨミ、最後の映画。

 ファントムのオーガによって奪われたホープリングによってコヨミと戦わせられる晴人。

 そんな絶望的な状況でも輪島のおっちゃんらの助言を経てコヨミを倒さずに救い出すのは実に晴人らしいなと思った。

 瞬平の作ったチチンプイプイリングで晴人が分身して、晴人のアンダーワールドの中に晴人が入っていけるのはウィザード最後の冬映画らしい展開だなと思った。

 晴人のアンダーワールドの中ではウィザードは無敵なのが最後らしいズルさ。

 仁藤は再びキマイラを宿してヘルヘイムの実を食わせることで魔力の代わりにしているけど、ヘルヘイムの実はほぼ紘太が最後に回収したはずだが仁藤はその後どうしたのかは気になる。

 アフターとしてウィザードらしく手堅く纏まった映画だった。

小説仮面ライダーウィザード

 『鎧武&ウィザード』の後の時系列の話。

 晴人と凛子目線で描かれる最後のお話。

 この2人、テレビ本編だとあまり描かれなかった関係性だけど互いに似たもの同士でコヨミ亡き後だと惹かれ合うのは当然だったんだなあと言うのが分かる。

 晴人最後の敵が心の中で思っていた自分自身の感情というのはウィザードらしい最後の敵だなと思った。

 ラスボスへのトドメがパンチで締めるのもウィザードらしいフィナーレだった。

 手堅く堅実に心情を積み重ねる、ウィザードらしさに富んだ小説だった。

 

 

 『ウィザード』は派手さこそないものの物語を着実に積み重ねるタイプの作品だったのがテレビ本編から小説まで通して再確認できた。

 派手なタイプの作品である『フォーゼ』や『鎧武』に挟まれてるので割を喰らいがちな作品ではあるがやはり『ウィザード』は好きな作品であると思えた。

 またどこかで新作に出会える日を楽しみにしていたい。