やはり面白い。
『キョウリュウジャー』と『ドライブ』で感覚を掴んで勢いを増した大森Pとクリティカル連発の高橋悠也がコンビを組んだだけに他では真似できない面白さがあった。
見返してみて毎回連続ドラマ構成ではなくて時折2話一部構成を挟んで話に緩急つけてるのを再確認できた。
やはりなんといっても檀黎斗はウケるべくしてウケたキャラだったという印象だ。
製作陣が狙って作れた訳ではないのは分かっているがこのキャラ付けならウケるのは当然だということが再確認できた。
岩永徹也氏の怪演が人気になった要因として大きい。
序盤は生真面目な優男だったのが5話で正体バラしてからどんどん邪悪な笑みが似合う男になっていく。そして18話で例の「宝生永夢ゥ!」を皮切りに怪演度がリミッター解除したのは見ていて面白かった。
医療×ゲームらしく要素の絡み方も上手かった。
例えば6話で音ゲーの苦手な飛彩が心臓マッサージのリズムでドレミファビートを乗り切ったり、10話で1人では使いこなせなかったドラゴナイトハンターZでマルチプレイをチーム医療に置き換えて4人で対応したりと要素の活かし方が上手かった印象だ。
そして極め付けはなんといってもリプログラミング。
不死身だったゾンビゲンムにライダーゲージを設けて倒せるようにしたり、洗脳されパラド傘下に入ったポッピーのプログラムを書き換えて再びCRの仲間にするなど半ばチートというべき性能を発揮していた。
恋愛ゲーム性質のラヴリカをリプログラミングで物理攻撃できるようになったタイミングでクロノスが襲撃してきたりと、ラスボスの性能でもラヴリカを正面から倒すことが出来なかったのが分かる。
それを書き換えるのだからリプログラミングはやはり便利な設定だったなと。
便利な設定だが実際の医療用語だというからチョイスとして納得せざるを得ない。
印象的エピソードはやはり32話だろうか。
上堀内監督のテレビ本編監督デビュー2部作だけあって画作りや演出がバチバチに決まっており、気合いが入ってるのが分かる。
まるで最終決戦のような冒頭からの盛り上げ、そこから時計のオブジェクトが長針を刻みながら檀正宗登場でクロノス変身、ポーズによる静止静寂からのラヴリカ撃破までの流れは何度見ても素晴らしい。
要所要所のカメラワークも他の監督では見たことないものも多く上堀内監督とはどういう監督か示す名刺のような回だった。
一年を通して敵を定期的に変えて尚且つヘイト管理もちゃんとしていたのも印象的だ。
ゲンム・グラファイト期(〜12話)→ゾンビゲンム期(〜23話)→パラドクス期(〜31話)→クロノス期(〜最終回)と変遷しており視聴者を飽きさせない工夫もされていた。
また敵キャラ一強にするのではなく主人公含め味方側も2、3話もすればカンフル剤となるようなパワーアップや新ライダーを登場させてインフレの応酬となるように作られていたのが特徴的。
こうすることで悪役無双にならずパワーバランスを絶妙に調整することができたわけだ。
ハイパームテキ登場後はラスボスであるクロノス最強の主人公をいかに攻略するかに焦点が合わせられ、ラスボスの足掻きを見せるという構成は他のライダーにはない特徴と言えるだろう。
トゥルーエンディング
時系列不明で公開された夏映画。それがまさかテレビ本編の後というのは度肝を抜かれた。
扱い的には46話と言うのが正しいだろうか。テレビ本編に登場したレギュラーキャラが各々にできることを結集して患者を救い、ラスボスを倒すという構成は王道だが紆余曲折あったエグゼイドライダーたちがやるのは感慨深い。
中でも見どころは映画の潤沢な予算とCG合成から繰り出される本気のハイパームテキエグゼイドVSゲムデウス戦。これだけでも今作をやった価値は大いにあった。
ゲストライダーの堂珍嘉邦のビジュアルも中々いい。吉川晃司や松岡充もそうだけどミュージシャンのライダー役のハマり率が高いのってなんでだろうね?ライダーのフィクション性とビジュアルの相性がいいからだろうか。
ポッピーや改心したパラドを除けばバグスターは基本的に人類殲滅派の存在なのがジョニーマキシマの存在で分かる。
ジョニーマキシマがいつからマキナビジョンの社長やってたかは分からんが(秘密裏に人間である本物のジョニーと入れ変わっていた?)、最終目的は人類滅亡だったし。
そして極め付けはビルドの先行登場。まさか平ジェネFINALに繋がってくるなんてこの時は思いもしなかった。先行登場は基本パラレルなことが多かっただけにガッツリ本筋に絡めてくるのはこれまでなかったので衝撃を受けたのを覚えている。
平成ジェネレーションズFINAL
そしてトゥルーエンディングから繋がる今作。
先行登場したビルドがまさかのテレビと地続きの存在になっていたのはやはり衝撃的。
「この時のビルドが葛城巧だった→その記憶を持っている戦兎は一体...?」というその後のテレビ本編にも繋がる話をしていて隙が無い。
『エグゼイド』も『ビルド』もプロデューサーが大森Pで、高橋悠也と武藤将吾の両名が脚本に関わっているからこそ出来た芸当だよなあと思う。
夏映画の先行登場をその後活用した例は今のところ無いので改めてその凄さが伺える。
ビルドは万丈の成長劇として、エグゼイドはトゥルーエンディングとアナザーエンディングを繋げる潤滑剤として、ゴーストはVシネと小説を繋げる存在として、鎧武は前作で出演できなかった佐野岳のリベンジとして、フォーゼは福士蒼汰のライダー帰還作として、オーズは「いつかの明日」の寄り道として、それぞれ本作における役割のようなものがあったのも印象的。
オーズに対する思いはこちらから。
仮面ライダーオーズ総括 ~際限ない欲望とメダル争奪戦と生の肯定~ - kuroganetukasa’s diary
また小説ゴーストを読んでからだとムゲン魂登場にも文脈が生まれる。
歴代ライダーが客演するタイプの冬映画は現行と前作を除けば基本的に本筋が進展するような仕掛けにはなってない。
強いて挙げれば『FINAL』の御成が大天空寺に戻る展開や『FOREVER』のダブルウォッチ入手くらいだろうか。
前作の進ノ介や晴人も客演である以上何か進展があったわけでは無い。
なので客演で本筋の進展を期待するのは違うと私は考える。
それなのにどういう訳か「いつかの明日」が見られると勘違いしていた人が目につく。
今作のオーズはあくまで客演なのだからそれはあり得ない。
アンクの復活も一時的なものだしファンサービス以上の役割はない。
いつか映司とアンクがもう一度並び立てる。そんな「いつかの明日」の寄り道でしか無いのだ。
ちゃんと並び立たないと「いつかの明日」とは言えない。
アンクが復活して映司の変身するオーズ、いつまでも待ってるからな。
さて、本題から逸れてしまったが『FINAL』は客演として今できることをやり切ったように見える。
最強フォームで戦闘員を蹴散らすだけという展開はいささか絵面に欠ける気はするが、6大ライダーののバイクチェイスやファンサービスの数々など見どころも多いので全体で見れば些細なことだろう。
平成が終わってしまったことにより平ジェネが早期に終わってしまったのは惜しい。
平ジェネシリーズがもっと続いていれば桐山漣と菅田将暉のダブルも見れたりしたのだろうか。
平成一期からも客演があったりしただろうし、それはそれで見たかった気もする。
平ジェネシリーズは何か形を変えてまたやってほしいと思う。
エグゼイドはここからアナザーエンディングへと繋がっていくのだ。
アナザーエンディング
アナザーエンディングはサブライダーの総括とも言える内容の三部作だった。
それと同時に檀黎斗を神から人間に戻す降ろすための儀式でもあった。
ブレイブ&スナイプ
飛彩、大我がメインの最後の物語。
小姫を救えなかった未練と後悔から飛彩と大我が別々で、けれど向かう先は同じとして小姫を救う話だった。
テレビ本編が始まる前からバクスターの抗体を宿し続けた大我が執念でクロノスになるのはシビれたねえ。ああいう気合いでパワーアップする展開が好きなんだ。
攻略条件が特殊なラヴリカを相手に飛彩がついに物理で攻撃が通るようになったのもよかった。小姫への想いがあれば最初から条件は揃っていたのが感慨深い。
なんと今作新規要素は新キャラのいわゆるVシネ恒例無から生えた女である八乙女沙衣子だけである。
リデコしたスーツは何もないのは逆に思い切った試みである。その代わりに大我クロノスやタドルレガシーが活躍するパートがあるのがいい。
おそらく3部作にすることで予算を節約する必要があったんだろうなと推測する。
短時間ではあれど飛彩と小姫があの日から言いたかったことを互いに言い合えたのはテレビ本編からの積み重ねを感じて良かったと思う。
パラドクスwithポッピー
パラド、ポッピーがメインの最後の作品。
バクスターとしてTV本編の紆余曲折を得た2人が出来ることは何かという話だった。
アナザーパラド、まさかそういう設定で来るとは。檀正宗に感染していたバクスターの設定をここで使ってくるのは唸った。
ただアナザーパラドがパラドそっくりの姿をしているのは最初期のバクスターは全てパラドになるのか、檀正宗のバクスターをパラドっぽく外見を作り直したのかどっちなんだろう。
そしてまさか2作後にアナザーライダーが来るなんてこの時の大森Pと高橋悠也は予想できたんだろうか。
八乙女沙衣子はまさか平ジェネ無印に出てきた財前美智彦の娘だったのにも驚いた。
ゲノムスも登場させたりとエグゼイドVシネは設定を拾って繋げるのが上手い印象。
ハイパームテキを出さない方法として変身前の永夢を半殺しにするの容赦なくて笑ってしまう。変身前を襲撃するのはエグゼイド当時だとVシネだから出来る切り口だと言えよう。でも実際そうでもしないとハイパームテキが出張ってきて話終わるのでこうするのは仕方ない気もする。
ゲンムVSレーザー
アナザーエンディング最終章。神と化した黎斗を人間に引き摺り戻すために貴利矢が奮闘する話だった。
ゴッドマキシマムマイティXは神となった黎斗のためのガシャットとして相応しく、ゲームを無限に生成可能で実質攻撃方法が無限にあるというのが面白い。
レベルもビリオンに設定されており正攻法で戦っても勝てないのが分かる。
後述する小説でも触れられていたがハイパームテキとゴッドマキシマムXは互角の性能らしく人間としての寿命がある分永夢の方が不利らしいということでエグゼイド世界で事実上の最強のフォームということになる。
まさに神の如く力なのだなと。
そしてレーザーX、まさかここでギリギリチャンバラのガシャットを使ってくるのは盲点だった。12話のリベンジの意味合いも含まれる上にレベル3レーザーのスーツをリデコする理由付けをしていて隙がない。
八乙女沙衣子、父の影を追うことなく自分の意思で黎斗を止めてくれるかと思いきやゾンビバクスター化して明日那を追いかけ回すだけで終わったのはもうちょっとなんとかならんかったか...?
Vシネ三部作通しての成長劇としての役割もあったので尻すぼみで終わったのは残念。
ゲンムとレーザーの因縁は雨の大森坂で始まり雨の大森坂で終わるというのは芸術点が高かった。
ラストで黎斗が貴利矢を人間に戻すことでバクスター化した人々にも解決の糸口が見えるというエンディングは医療ものらしくていいなと思った。
ゲームを通して黎斗が神の才能に拘るのは母親を助けられなかった医療への失望から来たものというのは意外だが納得の行く答えだ。
当然その黎斗がこんなところで終わるキャラな筈もなく...?というオチもエグゼイドらしい。
アナザーエンディング、ライダー恒例のVシネとしてはそこまで蛇足感もなくサブライダーたちの補完をする意味でも見てよかったなと思えるVシネだった。
マイティノベルX
永夢の過去の追憶、そして黎斗復活と全ての患者の危機を阻止するために奮闘するドクターたちを描いたエグゼイド最後の作品となる小説。
宝条永夢とはどんな人間なのか、これまで語られてこなかった過去に迫る一冊だった。
これを読んでからだとこれまでの永夢の見方が変わってくる、まさに伏線回収というべきだろうか。
マイティノベルX、ノベルゲーム形式で進んで行ってBADな選択肢を選ぶと即ゲームオーバーなのでかなりシビアな作りをしている。
エグゼイドの形態としては、言った発言が言霊のように実行されるという概念系の形態。パラメーターをカンストするようにステータスを割り振ったのがハイパームテキだとすればゲームそのものを書き換えるのがマイティノベルXといったところだろうか。
ゴッドマキシマムマイティXすらも凌駕する性能のガシャットが出てくる、もはやインフレの留まるところを知らないのがエグゼイドワールドだ。
...まあこの後もゲンムのガシャットはいくつも出てくるのでマイティノベルXが型落ちするのも時間の問題だろうな。
永夢の過去、医者として「患者の命と笑顔が何より大事」を掲げていた永夢自身が自分の命は軽く考えていたのは膝を打った。
黎斗が純粋と評していた永夢の「水晶」は純粋ではなく空虚だったというのは盲点だ。
自分という器が空っぽであるが故にそれを満たそうとする行いがTV本編における妄執とも取れる「患者の笑顔を取り戻す」だったのはまるで一本の線で全てが繋がっていたような感覚だ。
永夢の父親については究極的に家庭よりも仕事を優先する父親という印象だ。永夢に対するライン超えの発言は目に余るが、全国の患者を優先した医療人としての行いは理解はできる。
高橋悠也はその気になれば人を書けるというのが分かった。テレビ本編は書く気が無かったのも分かった。
飛彩の家族構成や大我の詩的な感性などの説明があったりメインキャラの深掘りもやっており隙がない構成。正直この辺はTV本編でやってほしかった感はあるが。
敵となったハイパームテキが恐ろしく強いのは笑ってしまう。
タドルレガシー、バンバンシミュレーション、レーザーターボの3人がかりで3秒時間を稼ぐのがやっとなの次元が違う。
テレビ本編は永夢が敵にならなくてよかったね。
黎斗はこれまでもバックアップを取って復活に備えていたので今回もそうだよなって印象。
永夢の体を乗っ取って人間として復活できるところまで来てるので神の才能の名は伊達じゃねえ。
永夢の寿命が続く限り永夢と黎斗の戦いは続く、まさに「終わりなきGAME」だ。
『マイティノベルX』、テレビ本編、劇場版、Vシネのその後を描いたまさに永久版「ノベル」だった。
永夢たちのゲーム=オペはこれからも続いていく。「終わり無きgame 楽しむだけ。」
以上がエグゼイドの総括となる。
『エグゼイド』は勢いに乗った大森P、高橋悠也のライダーとして目的地に一本道で駆け抜ける(エグゼイドではドクターとして患者の治療)という得意分野、エグゼイドの設定やテーマが奇跡的に合致してクリティカルを連発していた作品だということが後々の作品で証明されてしまっている。
だからこそ『エグゼイド』はまさに奇跡の作品。誰にも真似できない面白さに繋がっているのだろう。
作風的にもキャストは健在だし10周年を迎えたら何かしらアクションは起こしてくれそうな気はする。その時まで「進むべきlife 生きていくだけ」だ。
『仮面ライダーエグゼイド』やはり面白かったです。