機動戦士ガンダムSEED 総括

 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 』の予習も兼ねて『機動戦士ガンダムSEED』全話完走しました。

 子供の頃にコンテンツとしては触れていてPS2のゲームやったりストライクガンダムガンプラ作ったりするくらいには好きだったけど全話通して見るのは実は初めて。

 現在でも根強い人気を誇るだけあってどこを取っても素晴らしい。

 まず音楽は個人的に『ウルトラマンガイア』などを担当された佐橋俊彦氏。雄大で神秘的な音楽が特徴。その中にあるヒロイック性がバンダイの玩具番組とよく噛み合う。

 次にデザインはキャラデザが平井久司氏。男性キャラはカッコよくて女性キャラは綺麗な印象。どこか哀愁漂うデザインが『ガンダムSEED』とマッチしている。

 メカデザは大河原邦男氏と山根公利氏。近未来的でシャープなデザインは20年経った今でもカッコいい。中でもストライクガンダムは今でも大好きである。

 

 前置きはこの辺で、つまり『水星の魔女』を見終わったことで自分の中のガンダムへの熱意が再び燃え始めたので思い切って『ガンダムSEED』を見ることになったのである。

 

 まず全話見て思ったのは想像してたよりも話が重い。20年前の作品だったり最新作の『水星の魔女』が比較的ライト寄りの作品だっただけに相対的に重く見えた部分はあるけどそれでも重かった。

 ありのままの人類である『ナチュラル』とその共同軍事体である「地球連合」。

 もう一つの勢力が遺伝子操作して生まれた『コーディネーター』とそのコーディネーターが宇宙で住むプラントによって結成された「ザフト」。

 それぞれの出自と立場に葛藤しながら親友を撃たなければならないかもしれない苦悩を抱えるキラ・ヤマトアスラン・ザラ、2人の物語であった。

 まずはキラ。コーディネーターでありながらナチュナルの友達を助けたいために連合軍のパイロットとなってガンダムに乗る主人公。

 周りの連合軍からは裏切り者のコーディネーター呼ばわりされ肝心の友達からはコーディネーターであることで無意識に差別的な扱いを受けて壁を作られ苦悩している様子が伝わった。

 アークエンジェル艦長のマリュー・ラミアスや先輩にあたるムウ・ラ・フラガは時折りフォローしてくれたりはしたが根本的な解決には至らなかった。

 キラの苦しさを理解してくれる人はアークエンジェルには誰もいなかったのである。

 

 次にアスランザフトの実質トップである議長を父に持ち、ザフト軍エリートの証である赤服に身を包んだいわゆるライバルキャラのポジション。

 しかしガンダム強奪作戦の最中、親友のキラが敵であるストライクに乗っていることを知り、戦わなければならないことに苦悩する展開で悲劇性のある構成になっている。

 敵は倒さなければならないが、親友と戦いたくはない。キラもアスランもそのことで矛盾を抱えながら葛藤する様子が『ガンダムSEED』1番の見所であったと言えよう。

 特に28話でエンディング曲『あんなに一緒だったのに』をBGMに、不意に再会してしまった2人がフェンス越しに会話しながらエンディングに入るシーンは間違いなく名シーンと言えるだろう。

 また、お互い今ここにいるという存在を認識してしまったためにこの後戦わなければならない悲劇性を醸している。

 やがて2人は互いの友達や仲間を討ってしまったことで本気の殺し合いにまで発展してしまうのが哀しい。

 ストライクvsイージスのラストバトルは作画でも気合いの入ったものであり緊迫感があった。

 本気で殺し合った(未遂で終わった)ことからそこから憎しみだけでは何の解決にならないと悟り、自分たちの意思で大局に影響を与えようと決意するのがこれまでの積み重ねを感じた。

 そこからのキラのフリーダムガンダムの初陣、アスランジャスティスガンダム参戦からの共闘と、ストーリー的にもバトル的にも盛り上がる構成になっている。

 

 そして物語終盤キラは五万体以上の「試作品」の末生まれたスーパーコーディネーターであることが判明する。自らの生まれすら人の業を背負わされたことにキラは再び苦悩する。

 また同じ頃にザフトラウ・ル・クルーゼアークエンジェルパイロットのムウ・ラ・フラガの父親のクローンであることをカミングアウトする。

 コーディネーター技術もクローン技術も人類の夢であること同時に人の業の化身であることが強調されていた。

 クルーゼはそんな業に取り憑かれた人類など滅ぼせばいいと考えるが、キラは「それでも守りたい世界があるんだ」と奮起することでクルーゼを討つ。

 とにかくキラを悩ませ虐め抜くことに執念を燃やしていた印象だ。

 とにかく自分のことで悩んでいた、それがキラであると私は考える。

 少なくともネットで言われているような「何も悩まず舐めプするだけの主人公」ではない。

 何のために戦うのか、誰のために戦うのか。キラはその思いを秘めてガンダムという力を手に入れ戦う。それが『ガンダムSEED』だと私は思う。

 

 少なくともこの時点ではネットで叩かれてるほど悪くはないと自分は考える。

 製作スケジュール面から何度も総集編を差し込まれたり、戦闘シーンの作画の流用も目立つが、それは後のガンダム作品からも分かる通り無謀なスケジュールであったことは理解している。

 名作『機動戦士ガンダムSEED』見ることが出来てよかった。

 次回作の『SEED DESTINY』も引き続き見ていきたい。