忍者戦隊カクレンジャー 総括 〜イカしたヤツら〜

 初の忍者系戦隊見終わりました。

 忍者や妖怪といった和風とアメコミチックな擬音やハイカラなデザインを融合させた一作。

 女性戦士がリーダーを務めているのも特徴。忍者の宗家の当主として姫であるのも忍者系戦隊らしい設定になっている。変身時の掛け声の「みんな行くわよ!スーパー変化!」は毎回恒例となっていた。

 サスケ達がバス型の猫丸に乗り込み日本各地を転々とするロードムービー形式のストーリーになっているのが特徴。

 毎回面白さが飽きることなくずっと最後まで続いたのは素直に凄いこと。簡単に真似できる技ではない。

 ここからは一部ごとに振り返っていこう。

第一部

 他の戦隊にはない特徴として俗っぽさが挙げられるだろうか。

 スケスケ望遠鏡で鶴姫を覗こうとするサスケ、仲間の私服を勝手に売り捌こうとするセイカイ、それを知ってボコボコにするサイゾウ達など他の戦隊と比べると俗っぽいキャラづけになっている。

 カクレンジャーはこの時、同時期に見てたのが軍人テイストの『デンジマン』と仕事人気質の『ブンブンジャー』だったので尚更俗っぽさが際立つ。

 同じ俗らしさのある『ドンブラザーズ』はアニメ的な常識はずれのキャラ造詣だが、こちちは現実的な範疇で俗っぽいキャラづけになっているのが印象的だった。

 そんな傍から見ればくだらないような出来事でも第一部完結時に離れ離れになる5人にとってはかけがえのない思い出に変わっているのは、してやられたと思った。

 これが感動的に見えるようここまで計算してやってきたとしたらスタッフの手腕は相当だ。

 またそんな良くも悪くも等身大の若者だけど人々のピンチに駆けつけてカクレンジャーになるとカッコよく締めるのが本作のクセになるポイントだと言えよう。このギャップにやられた。

 

 もう一つのポイントは貴公子ジュニアだろうか。

 遠藤憲一演じる貴公子ジュニアの登場で妖怪側のパワーアップと戦闘における緊張感が生まれたと思う。

 実際15、16話では花のくノ一組を使ってカクレンジャーを1人1人孤立させて確実に潰すことで全滅一歩手前まで追い込んだので戦術として間違ってなかったのが分かる。

 エンケンの演技力を見せつけながら敵幹部ガシャドクロとしても実力とオーラを放ち、番組中盤まで作品を牽引し続け最後は隠大将軍の初陣という販促に花を持たせる形で退場したのでまさに理想の悪役だったと思う。

 

 

第二部「青春激闘編」

 中盤で隠大将軍完成のためにバラバラとなった5人。

 一人一人に焦点を当たるために「戦隊なのに5人揃わない」という展開を成り立たせるため販促をいかに成立させるかというロジックには唸るものがあった。

 この辺は後に『仮面ライダー555』でも見られる販促の成立ロジックにも通じる。

 順に振り返っていくと、25話ではサスケ以外ほぼ出ないという構成。販促は新商品ゴッドサルダーとスーパー無敵将軍を出すことで成立させる。

 26話では鶴姫が主役だが、人形という形でニンジャレッド達4人も登場させた。戦闘の締めはスーパー無敵将軍が担当。

 27話ではサイゾウとセイカイのみの登場。中盤で無敵将軍を出すことでロボノルマも達成している。

 28話はジライヤのメイン回だがまさかのブラックの出番なし!代わりにレッドが販促を担当した。というかそれしかなかった。ショウ・コスギ氏の出演に全振りしているとはいえ思い切った構成だと思う。

 29話でサスケ達5人がやっと集結する。

 ...とこのようにニンジャレッドか無敵将軍どちらかを出しておけば成立するのが『カクレンジャー』の販促であると推測できる。

 この辺のロジックは面白かった。

 

 もう一つ印象的なのは三太夫の死である。

 まさか三太夫が途中で退場するのは想定外だった...。

 ベテラン俳優が演じる司令官ポジションのキャラは作品にとって聖域みたいなものでまさか途中で殉職するなんて思ってもなかったからだ。(視聴済みの作品の範疇で)

 気の良さそうな朗らかな雰囲気が若者だらけのカクレンジャーの色にアクセントを加えたみたいで好きだったのでショックである。

 

 最終回では、1話で先代カクレンジャーがなぜ大魔王を倒すではなく封印するを選んだのかが伏線になっていたのは驚かされた。
 「人間に憎しみの心がある限り妖怪は何度でも蘇る、だからこそ憎しみの心にはフタをしよう」というのは実に子供番組らしいオチだなと思った。
 ラストはロードムービーものらしく5人の旅で締めるのは粋な演出。

 

 

第三部「中年奮闘編」

 そして30年を時を経て新たな続編として作られたのが今作。

 今風にカクレンジャー取り直したらこうなるっていう理想例のような作品。

 坂本監督らを始めとしたスタッフによるリスペクトの塊だった。見たかったものが全部詰まってたのが嬉しい。

 加齢による老眼や腰痛には悩まされながらもいつものカクレンジャーがそこにはあった。
 まさか貴公子ジュニアで泣かされる日が来るとは思ってなかった。エンケンの演技も含めて最後まで名悪役だったよ。

 妖怪大魔王が今にも復活しそうなラストだったので続編の構想はあるんだろうな。ぜひまた続編をやってほしいね。

 第三部中年奮闘編、カクレンジャーの30thとして見たかったものを全部見せてくれた作品だった。最高でした。

 

 

 

 『カクレンジャー』、最後まで面白かったです。好きな戦隊ランキングトップ10に入るくらいには毎回面白かった。

  初の忍者系戦隊の枠に収まらないオシャレさと現代らしさを詰め込んだ一作。

  毎回面白かったのはシンプルに凄いことだ。

  妖怪とは人の心の在り方でもあるというラストは唸った。

 90年代戦隊はこのような傑作揃いの作品ばかりだと思うといずれ公式配信で見る時が楽しみでたまらない。

 中年奮闘編のラストからしてどんな展開が待ってるか今後が楽しみだ。