機界戦隊ゼンカイジャー 総括 

 ゼンカイジャー、1年かけて見終わった。

 狂気のギャグの連続、それを理屈で整合性を取るという作業を1年続けた傑作だった。白倉伸一郎氏のプロデューサーとしての手腕、香村純子女史の脚本家としての実力で走り切った名作でもだった。(もちろんキャスト、スタッフの1年の努力の賜物でもあるのだが。)

 何気に素晴らしい点は1年途切れることなく面白さが続いていてかくいう私も毎週楽しみに視聴していた。

 さりげない描写も手を抜かずに描かれており、ゼンカイトピアもキカイトピアも見た目も文化も違う中で対立することなく共存している構図を見てこれが多様性なんだと思わされた。

 ただ不満点も残った。歴代戦隊の扱いである。『海賊戦隊ゴーカイジャー』で1年間レジェンド戦隊キャストを客演しつづけたのは印象に残っている。なので少なからずゼンカイジャーにも歴代キャストが出てくるのを楽しみにしていたのは事実である。

 「ゴーカイジャーでやったから2番煎じなのでは。」とか「コロナ禍だから難しいのでは。」とか意見もあるが、本作は全ての戦隊世界が独立しているという設定である。だからゴーカイジャーとはどう考えてもパラレルの存在になる。その設定の旨味を活かしきれなかったのは惜しい点だなと考えている。

 コロナ禍だからという理屈もそもそも時折ゲストキャラを出している時点で感染対策という意味でそんなに変わらないだろうは思う。出てくるゲストキャラが見たことあるか初めて見るかの違いでしかない。

 そもそも『特命戦隊ゴーバスターズ』から『魔進戦隊キラメイジャー』まではゴーカイジャーの頃には存在してない作品だ。その9作品から1人ずつ客演させるだけでもゴーカイジャーとは差別化が出来て1クールもかからず尺を圧迫することもないはずだ。

 さらに『特命戦隊ゴーバスターズ』の陣マサトや『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のナダなど本編で退場したキャラがパラレル世界では存命しているという設定にすれば本編ではあり得ない展開にすることだって十分出来た。

 結局歴代客演をしなかったのは白倉氏の考えだろうと邪推してしまう。『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』のためにネタを残しているのか今はわからないが、仮にそうであったなら45周年のタイミングでゼンカイジャーが受け持つ歴代要素というのは薄かったと言わざるを得ない。

 センタイギアを通してレジェンド戦隊の小ネタやジェットマン最終回パロディをしたのを加味しても本人客演よりはどうしても薄い要素にしかならないと考えているからだ。

 個人的な期待とずれたと言われればそれまでだが、ゼンカイジャーに本人客演を期待していたのは私だけではないだろう。

 ゼンカイジャー、全体を通してよくできていた作品だったし私も好きな作品ではあるのだが、100点にはなれない90点止まりの作品だったのが最終的な位置づけになる。